日文の卒業式
卒業式でした。
日本文学科という就活にも将来的にも、なんら役にたたなそうな学科に入り早4年。
本について学びたいと思ったのは小学生の時。夢が叶えることができて本当によかった。
……と書くのが一般的でしょうか。
そんな綺麗な言葉は似合わないですね。腹を割って話しましょう。
日本文学科は、マジで将来には役立ちません。
読書が好きっていう人はたくさんいます。でも結局そこまでなんです。物語の考察とか、時代背景とか、詳しく調べて読む人なんていません。研究者や受験生は別だろうけど、一般企業ではまあ必要ないものだよね。新聞社や出版社では必要だろけど、狭き門だしなあ……
つまり一般向け企業に日文は不利! 以上です!!
しかし振り返ってみると楽しかったなあとは思います。
江戸川乱歩について語ったら人事にドン引きされるし、私を含めて趣味に閉じこもる人も多いし、予想斜め上の反論されるし、ゼミではフルボッコにされるけど
こんなにまで本について考えた期間はなかった。楽しかった。
本について語れる人たちがいてよかった。ちゃんと読み込まないと議論に参加できないから、マジで面倒だけどな!
それにしても一冊の本で、何通りもの読み方ができるってすっごいことですよね。たった1行にあーだこーだ話し合って……はた目から見たらサイコパス。自分の意見を貫くため些細なことに、必死に真剣に争っていた。
だから私は後悔していません。ここで学べて本当によかった。
ちなみに卒業した身から言わせてもらうと、本好きじゃない人は日本文学科をマジでおすすめしません。国語の点数がよかったから、っていう理由だったら、ほかの学科に行ったほうがいいです。英語が苦手なら、法学部とか経済学部へ行きなさい!
就活不利なのに、本についてガッツリ学ばないといけないんだよ? 絶対やめといたほうがいいです。生きる意味を見失う。
あと日文の人は変な人が多いです。面白くて変な人ならいいんですよ。ドン引きするような変な人ばっかだからね!
たとえば……ってところで、ここで卒業式の話になります。ようやく目的の話題に移れます。
卒業式のあと学位記をもらうため、日本文学科だけ集まりました。
式が開始し、まず最初は古代専門の教授から祝辞を頂戴します。
「みなさん、卒業おめでとうございます。
……実は最近、悩んでいることがあります。源氏物語についてなんですが」
まさかの源氏物語
内容としては、源氏が絵合わせで出した絵が、ある女性の悲劇を描いたものだった→そういうの弱みに付け込んだ感じでセコくない?
みたいな話でした。まさかの話に驚きすぎてよく覚えてません。
源氏物語の話は続きます。
「いくら考えてもわからないので、今の話聞いてわかった人、あとで教えてください」
まだ分かってないのかよ。
そして「釈明するわけではないですが……」とおっしゃたため、「お、ようやく祝辞か?」と期待しました。
「こうやって悩んだときのことを忘れないでください。いつか壁にあたったとき、これらの経験はヒントになるはずです」とありがたいお言葉を頂戴しました。
確かに考察するとき、分からず悩んだときは、とりあえず論文をあさりました。あとは友人に相談したり。自分の世界に閉じこもっているとまったく見えないものが、他の風が入ると一気に解決したりするものです。
その経験は味わったことがあるため、うんうんと頷いてました。しかし祝辞が終わり、ふと思いました。
源氏物語の話、必要だった?
本気で答えが分からないから、祝辞を称して質問したかっただけじゃあ……
あとは「覚醒事件」なんかもありました。
100人弱全員が学位記を頂戴した後、祝辞の言葉として私のゼミの教授が選抜されました。
ちなみに四年間まるまるお世話になった人です。
東大卒の教授です。頭の構造が違いすぎて、彼と話すとき私はものすごく怯えてます。ものすごい変態です。ネクタイのセンスがおかしいです。江戸川乱歩の歴史的な資料を発見して、テレビにも出演したことがあります。ちなみにその時にムンクの叫びのネクタイをしてました。
普段は落ち着いた声で話す方です。ものすごい変態だけど(2回目)
「これから君たちにエールを送ります。ぜひ一緒に参加していただきたい」
まさかの参加型の祝辞です。みんなで立ち上がります。
教授「日文!」
生徒「ファイトー!」
教授「日文!」
生徒「ファイトー!」
教授&生徒「フレッ!フレッ!日文!」
……リハーサルはこんな感じです。男の子たちがふざけ大きな声で応援していたので、みんなも最後にはノリノリでやっていました。テンプレかもしれませんが、こういうのも思い出になるなあなんて思いながら、本番に臨みます。
「では本番いきます」みんなで和気あいあいとしながら、教授の掛け声を待ちました。
「ニイイイイイイチブン!!!!!」
私「?!」
生徒「ふぁ、ふぁいとー」
「ニイイイイイイチブン!!!!!」
生徒「ふぁ、ふ、ふぁいとー」
「フレッフレッニチブン!!!!!」
生徒「(絶句)」
わかりますか、この時の気持ち。
たとえば最近、政治家が漢字を読み間違えて叩かれた事件がありましたね。私、ああいうのダメなんですね。こっちまで恥ずかしくなってしまうんです。
それを最大化させてください。
ほとんど声を出してないのに、顔が真っ赤になりました。ドン引きです。四年もご教授いただいた人なのに、あの時だけは本気で「なんでこの人のゼミをとったんだろ…」と激しく後悔しました。
大きい声ならいいんですよ。応援団のような、腹から出す声。
しかし教授のは、必死な叫びというか……それこそ江戸川乱歩「芋虫」で、妻に目をつぶされた男の悲鳴のような……
教授の見たくもない新たな一面に触れて、学位授与式は終了しました。
最後まで日文らしい、なんとも形容しがたい式でした。ありがとう日文!(無理やり)
あと式の後に撮った写真、みんなラインで送ってください(私信)