ミッキーマウスの憂鬱 / 松岡圭祐
これだけ言わせてください。
怒られるぞ
怒られるだけならまだマシです。下手したら裁判起こされるレベルだぞ。「フィクションです」という一文がOLCにどれだけ効力があるのか……
ストーリーはそんなに凝ってないですが、あらゆる情報を詰め込んだ小説を書く松岡圭祐。小説というよりも、ビジネス本に近いですよね。「万能鑑定士Qの事件簿」は全て読みました、面白かったです。ぜんぶ売ったけど。
松岡圭祐ということで購入したんですけどね。ギリギリアウト…いや、完全アウトな文章ばかりで笑いました。
あらすじとしては、
ディズニーランドで働く後藤と仲間たち、という感じです(簡潔)
後藤くんは最初、ジャングルクルーズのテストを受けるのですが、あまりに天然すぎる発言をして落ちてしまいます。そして彼が行ったのは美装部。ショーの準備や、着ぐるみを着せるキャストです。
そこ一番書いちゃいけないとこや。
着ぐるみの重さや、キャストによって着ぐるみの大きさが違うこと、他キャラと身長を合わせるために1人キャラが消えたら総入れ替えになること……
ど、どこまで本当なんだろ…(冷や汗)
そして途中でミッキーマウスの着ぐるみが失くなります。ショーとグリ、それぞれの着ぐるみは質も軽さも違うそうです。なくなったのは一番高級なショー用の着ぐるみでした。
正社員の人たちは、ある準社員に責任を押しつけます。準社員は精神的に追い込まれ、ビックサンダーマウンテンの中に入りこみ、自殺未遂までします。後藤くんのおかげで、自殺は免れましたが、それも相まって正社員は彼女を強く責めていきます。
結局、外部の業者が誤って別の倉庫に運んでしまった…というオチでした。
読んでて思ったのは「たぶんストーリー重視じゃなくて、ディズニーランドという誰も手を出さない題材で、過激なことを書きたかったのかな」ということです。
面白いです。読んでて次々とページをめくってしまいます。
けど小説自体を楽しんでるわけじゃないんですよ。芸能人のゴシップ記事を夢中で読んでしまって、あとから自己嫌悪になる感じに似てる。過激なネタにまんまと釣られたしまった感があります。
何が言いたいかって、ツッコミどころが多すぎるんですよ。
正社員のおっさんたちも、確かにクズ野郎です。彼女に責任をとらせようとしたり、自分たちの立場を必死に守ろうとしたり…見てて見苦しいです。
しかし準社員の子もビックサンダーマウンテンの線路に入り込むのはどうかと思う。
しかも「この仕事たのしい」って線路上で言われても、何の説得力もねーからな。お前が止めた46分で、どれだけのキャスト、ゲストに迷惑かかるのか分かってんのか(血涙)
「こんな夢も魔法もない国なんて!!」ってヒステリーになった方が、まだ同情をひきましたね。
あと後藤くんの成長が早すぎ。
1日目、人が足りなくてミステリーツアーのサクラを演じるのですが、途中で生意気な子供の頭をわし摑みにします。ワイルド〜〜。
しかし後の場面では、雨で泣いてる子供に駆け寄って優しい言葉をかけるんですね。豪雨でお母さんも帰りたがっているのを見かけ、こう言います。「ミッキーはきっと、青い空の下で君と会いたいと思ってるよ。だから今日はゆっくり休んで、また来てね」と。
いい言葉ですね。子供も納得して、お母さんと共に帰ってきます。ほのぼのとしたワンシーンです。
ミステリーツアーの時と比べると成長を感じられます。
しかしここまで2日しか経ってないんですよ。やべえだろ後藤。成長早すぎ。違う後藤さんでしょ。
ツッコミはこのへんにしましょう。キリないから。この小説の目玉について話しましょう。
おそらく目玉は、正社員vs準社員という構図でしょうか。
こんな構図はどこの企業でも起こるものですが、OLCは特に顕著な気がします。やはり準社員の方がパークに出て、ハピネスを提供してるという誇りが強いからでしょう。
「準社員をやりたい人は多いから、誰か問題起こしたり、不満を漏らしたら、やめさせればいい。だから制度も改革されることはない」と書いてありました。
うん、まぁ同意っちゃ同意ですね。確かに給料安いな〜とは思ってましたよ。
でもサービス業って一番値段がつけにくいしな〜〜とも思います。製造業と違って1つ1つのサービスに値段がつけられないでしょう? 笑顔1つ10円って決まってればいいのにね。そうしたら適切な値段設定ができるのに。
もうさ、準社員の方が圧倒的に人数が多いから、どう頑張っても不平不満は出ちゃうもんですよ。
だったらどうすればいいかって? 経営者じゃないので知りません(放り投げ)
仕方ないと思って作った区別が、誰かにとっての差別になる。そんなことよくある話です。
だからってそれを受け入れても辛いだけだし、反抗しても苦しいだけ…どこかには必ず皺寄せが来るもんです。
だから思うのは、辛い苦しいと思った時に、相手の立場を考えれば、少しは穏やかになれるのではないでしょうか。他人を責めるんじゃなく、自分の考え方を変える形にできれば、きっと見える世界は変わると思う。
…けど、こんな綺麗事を書けるのはカルディでカフェオレ飲んで、余裕があるからなんですが。実際そんな状況になったら、相手を責めまくります(元も子もない)
この小説の中で、正社員のおっさんは最後、報いを受けて終わるけど、現実じゃ多分そんなにうまくいかないのでしょう。
ていうか最後の復讐の仕方も、とってつけたような感じだったのがなんとも……正社員のお偉いさんをミッキーの中に隠すってどうよ。正社員のおっさんがべらべら自分の悪事を話したからよかったものの、うまくいかなかったらマジでクビだぞ。
このままだと色々ツッコミながら書いて終わりそうにないので、まとめに入ります。
とりあえず
夢を崩したくない人は見ないでください。
夢と現実を割り切れる人は楽しめるんじゃないんでしょうか。一応「色々大変だったが、やっぱりここは夢と魔法の王国だ!」という終わり方ですし。ツッコミどころは多いですが、きれいにまとまってるのではないかと。多分。
裏方のありのままを書いたことに対し賛否両論あると思いますが、私は賛成派寄りです。
ゲストとして入るとやっぱり楽しいんですよ。それって夢と魔法とかいう抽象的なものじゃなくて、キャストさんがにこにこしてくれるからなんですよね。それを再確認できる小説でもあると思います。
特にお花を植えてくれるキャストさんには、心からの感謝を伝えたいです。いつもありがとうございます。撮ってるだけで幸せな気分になります。
というわけで、こないだ撮ったお花の写真でお別れしましょう。